菜食コンサルタント「山﨑由華さん」に聞く!バランスの取れた菜食を行うにあたって、意識したいこと

2019年に、カナダでBSc AHN(応用人間栄養学学士号)を取得し、首席で卒業。「菜食は不健康」という概念が強い中で、より多くの人に安心して菜食を実践してもらえるよう、栄養学視点からみて抑えるべきポイントや地球とからだ想いの菜食おうちごはんを提案する「菜食コンサルタント 山﨑由華さん」に、バランスの取れた菜食を行うにあたって、意識したいことを伺いました。

菜食コンサルタント「山﨑由華(Yuka Yamazaki)さん」

山﨑由華(Yuka Yamazaki)さん自身について

1996年東京生まれ。植物性の食品だけでも私たちが健康でいるために必要な栄養素は摂れることや食品産業の実態を知り、ヨーグルトも焼き魚も大好きだった私ですが、2016年から菜食に移行しました。菜食は「不健康」「我慢しないといけない」というイメージが強い中で、大学で学んだ栄養学の知識と実際の菜食生活の経験から、楽しく実践できる日本人に合った菜食を提案しています。

ヴィーガンライフに移行したきっかけ

高校卒業後、カナダの大学で4年間栄養学を学ぶことになったのですが、そこでの大学生活がヴィーガンという選択をするきっかけを与えてくれました。カナダの大学の栄養学の授業では、栄養素についてだけでなく、私たちがいただく食材がどのように作られているのかや、農業がもたらす環境への影響、また私たちはなぜ今食べているものを食べているのかなどの現代食の文化的・歴史的背景についても学びます。

例えば、チーズやヨーグルト作り、プロテインシェイクなどにもよく使われる牛乳は、人間と同じように9ヶ月間の妊娠期間、そして出産を終えた母牛が赤ちゃんのために出すものを、出産一日後には赤ちゃん牛と母牛を引き離して人工ミルクを与えることで、人間が得ることができている食品だということを知ったり。

畜産業や酪農業をする上で出る家畜の糞尿やゲップ、オナラからくるガスは、温室効果ガスとして働いたり、水質汚染の大きな要因になっていることや、家畜を育てるためにはたくさんの飼料が必要で、地球上で育てている穀物の半分以上が家畜用に育てられていたり、飼料用穀物を育てるために土地や水などの資源が大量に使われていること、屠殺場などで働く労働者は精神的肉体的ダメージが大きいことなどを知ったり。

私たちが日常的に食べる食事をつくる現代の食料システムで起きていることを知った後、完璧ではなくともできる限り自分が納得のいく選択をしていくように決めて生活をするようになったら、それがヴィーガン生活に当てはまるということに気がつきました。

カナダは文化や宗教が全く異なる人たちが住んでいる国なので、「ヴィーガン」だけでなく、「ハラール」や「ベジタリアン」など、様々な食のスタイルが受け入れられていることから、仲良しのグループの中でも一人一人の食の主義が違って当たり前で、ヴィーガンライフに移行しても人間関係で苦労することはありませんでした。

Yukaさんの活動について

2020年より、菜食コンサルタントとして企業のレシピや商品開発のお手伝い、菜食栄養学の講義・登壇を行っています。また、菜食を実践したいと思う人が安心して気軽に取り入れられるように、菜食栄養学やおうちでつくれる簡単レシピや心地よい暮らしについてもSNSで発信したり、菜食に関する連載の執筆もしています。

菜食コンサルタントとして活動しようと思ったきっかけ

ラッキーなことに、私がヴィーガン生活に移行した時はカナダというとてもヴィーガンフレンドリーな国にいたということと、栄養学の知識があったため栄養面で不安になることがなかったこと、そして英語でヴィーガン生活の発信をしている人も多かったということが重なり、迷子になることなく、疎外感を味わうこともなく、快適にヴィーガン生活を送ることができました。

でも日本でヴィーガン生活を始めるとなると、状況は全く変わってきます。

私がヴィーガン生活を始めたばかりのころは、日本でヴィーガン生活についての情報が少ないどころか、ヴィーガンという言葉を知っている人もほとんどおらず、健康的なヴィーガンの食事の取り方がわからなかったり、人付き合いが大変で、ヴィーガン生活をしたくても続けられないという方がかなり多い印象でした。

そこで、「日本でヴィーガン生活をしている人が、より楽しく心地よく人の輪の中で暮らせるように」という思いで、大学在学中にYouTubeを通して等身大のヴィーガン生活の発信を始めたのが現在の活動の始まりです。

私はもともと栄養学の専門知識がありましたし、論文を読みつつ情報を得ながらヴィーガン生活に移行したので、特に体の不調も感じることなく続けられていますが、日本で信頼のできる菜食栄養学についての発信をしている人は当時なかなかいなかったことと、栄養学の知識なくヴィーガン生活を取り入れて体調不良になっている方がいることも知っていたので、楽しく健康的にヴィーガン生活を続けていくお手伝いができたらと思い、大学卒業後は日本に帰国し、菜食の栄養学セミナーを開くようになりました。

本格的に栄養学を学び、学術論文から情報の正確さを読み解くことができるのが自身の強みでもあるので、そのバックグランドを生かし、信頼のできる情報を発信し、これからも日本でのヴィーガンライフを選択する人や日本のヴィーガン市場を作りあげていく企業様のサポートができたら良いなと思っています。

また日本では「菜食の人は我慢してそう、元気がなさそう、すごく痩せている、血色が悪そう。」といったイメージがついてしまっているのが実情で、私の活動を通してそれを払拭していきたいとも思っています。

菜食コンサルタントからみた、ヴィーガン食の始め方、無理しないヴィーガンライフの取り入れ方

ヴィーガン食について興味をもって始めようと思ったときには、初めから動物性食品をゼロにするのではなく、慣れてない食生活は精神面・体調面からみても懸念するポイントがあるので、少しずつ植物性食品の割合を増やし、カラダを徐々に慣らしていくことが大切です。

例えば、週一だけ、朝食だけ、ランチタイムだけなど自分が取り入れやすいタイミングや頻度から菜食を始めたり、友人や家族との食事の時はヴィーガンを貫くことが難しい場面も多いので、まずは自分で料理を作るときだけは菜食にしてみるのがおすすめです。

また、少しずつ動物性食品を植物性食品に置き換えていく方法もあります。もう新しくお肉を買うことは控えるようにし、今後は大豆ミートやお豆腐製品、豆類、きのこやナッツ・シードに置き換えてみるのがおすすめです。

コスモポリタンで大豆ミートすら使わない、肉なしミートソースパスタの作り方をご紹介しているので、ぜひご覧ください。

卵料理の場合は、木綿豆腐とターメリック、ブラックソルトが大活躍します。ブラックソルの硫黄のような香りが卵のような風味を出してくれるのでおすすめです。

焼き菓子で使う卵はチアシードやフラックスシード 、アクアファバやマッシュしたバナナなどで置き換えることができます。アクアファバは日本ではあまり知られていませんが、ひよこ豆を煮た時に出る煮汁のことで、卵白の代替品として海外ではよく使われます。卵白が主要な材料のお菓子のマカロンも、アクアファバを使うことで、卵を使わずに作れてしまいます。

乳製品については、牛乳を豆乳・アーモンドミルク・オーツミルクといった植物性ミルクへの置き換えるだけですし、チーズやヨーグルトも最近は植物性のものも最近一般的なスーパーで目にするようになり、結構楽に移行することができます。

アイスはシャーベットや豆乳アイスにしてみたり、家で冷凍フルーツを使って作ることもできたり、 バターはココナッツオイルやヴィーガンバター、ピーナッツバターなどで代用できます。

まずお肉を止め、次に卵を止め、牛乳を止めてみる・・・・といった感じでゆっくり進めるとカラダへの負担も少なく、無理なく続けられるので、ご自身の取り入れやすいところからできる範囲で取り入れてみると良いかなと思います。

あくまで私個人の考えですが、ヴィーガン生活にしても、他の習慣にしても、我慢をしなといけないものはと続けられません。なので、まずは自分がどのくらいで取り入れるのが心地いいのかを自問自答しながら取り入れていくのがいいのではないかなと思っています。

また、動物性食品を長年摂取している場合、胃や腸が動物性食品の入っている食事を消化するのに慣れてしまっているため、いきなり植物性食品100%の食事にしてしまうと、胃腸が上手く対応できずに栄養素がきちんと吸収されなかったり、胃腸への負担も増えてしまいます。それによって、ホルモンバランス乱れたり、肌荒れを起こしてしまったりと一時的なトラブルがでてしまうこともあるため、自分のカラダをいたわりながら少しずつ始めるのがこれからヘルシーなヴィーガン生活を長く続けていくための一番の近道だと思います。

ヴィーガンにとって大切な栄養素について

まずヴィーガン食で意識したい栄養素を理解するためには、一般的とされているノンベジの食事とヴィーガン食の違いをちゃんと理解するのが大切です。

ノンベジの食事は主に穀物、肉魚卵、乳製品、野菜果物などを主に含むのに対して、  ヴィーガン食はノンベジの食事から動物由来の食品を除いて、乾燥豆やナッツ、シード、海藻、きのこなども積極的にとっていく食事です。

ヴィーガン食を実践するときに取らなくなる動物性の食品には、たんぱく質源と言われているお肉、魚、卵や、ミネラル源と言われている乳製品や貝類が含まれているので、タンパク質やミネラルが不足しないように特に意識していくことが大切になってきます。

そこで、動物由来の食品には主にどんな栄養素が豊富に含まれているのかを見ていくと、タンパク質や鉄、ビタミンB12、ビタミンB2、カルシウム、亜鉛、ビタミンD、オメガ3脂肪酸の8つです。でもこの8つとさらに他の栄養素もバランス良く摂れるように、意識してご飯を作ったり食べなきゃいけないってなると、気が遠くなると思います。そこでお勧めしたいのが、まずはタンパク質、鉄、カルシウムの3つを、ホールフード食材で補っていくということです。

ホールフード食材とは・・・

あまり精製や加工のされていない食材で、できるだけ収穫された時の形を保っているものをいいます。例えば野菜果物はもちろん、ナッツやシード、豆類、  玄米やオーツ麦などの精製されていない穀物、パクチーやバジルなどのハーブ、そしてターメリックや生姜などのスパイスです。

ホールフード食材を中心に食生活をデザインしていくと、一つの食材から幅広い栄養素を効率よく取り入れることができ、この3つの栄養素だけに着目するだけでも他の必須栄養素もバランスよく取り入れやすくなります。

そして追加で、動物性の食品にしか含まれていないと言われるビタミンB12はサプリや発酵食品などで、そしてオメガ3脂肪酸を取れるようにフラックスシードやチアシード、くるみなどを取り入れていくのが安心です。 

ヴィーガンに限らずこれからの人生において健康的な身体と心を作るために、自分にはどんな栄養素が必要で、どの食材からその栄養素が取れるのかということを知っておくことはとても大切なことだと思います。初めは少し面倒に感じるかもしれませんが栄養学は、自分の身体や不調と向き合うセルフケアの学問だと思います。自分を大切に生きる手段の一つとしてぜひ意識してみていただけたらと思います。

ヴィーガン生活を続けてみて、何か変わったこと

体調面の変化でいうと、小学生の頃から頭痛持ちで頭痛薬を常に持ち歩いて生活をしていたのですが、ヴィーガン生活を始めてからは頭痛薬がいらなくなったことが個人的には一番大きな変化でした。また植物性の食品は動物性の食品よりも胃腸が消化しやすく、消化にかかるエネルギーがとても少ないため、倦怠感を感じにくくなったり、体が軽く感じたり、寝ている間にちゃんと臓器が休めるようになるので目覚めも以前より良くなりました。

生活面では、今まで以上に相手の立場に立って物事考えるようになりました。

日本でヴィーガン生活を送るにあたり、友達や家族に理解されず、人間関係で悩んでいると相談を受けることも多いですが、ヴィーガンの選択肢は個人の自由であって、相手に強要するものでも、理解を請うものでもないのかなと思っています。

ヴィーガン生活を始めると多くの人がヴィーガンというライフスタイルを広めたいという一心から、人にヴィーガン生活について聞かれてもいないのに話したり、おすすめをしている場面によく出くわします。でも、例えば自分が逆の立場で、ヴィーガン生活を心地よくしているのに、「お肉はこんなに美味しくて体にもよくていいんだよ!なんで食べないの?」なんて言われたらあまりいい気分はしないかなと思うんです。

なので、なぜヴィーガンになったかということは質問をされない限り、自分からは話さないようにしています。目の前にいない動物たちのことや大変な思いをしている労働者のこと、地球のことを思って実践している生活ですが、まずは自分の目の前にいる人のことを大切にしたいですし、お互いの選択が尊重され、心地よい時間を共に過ごせるコミュニケーションを心がけています。

世の中は、白黒つけられないことだらけ。まだまだマイナーなライフスタイルを貫こうとすると、時に予期せぬ壁にぶつかることも出てきますが、まずは他の人からの理解を得られようと必死になるよりも自分自身がいかに楽しくヴィーガン生活を送れているかにフォーカスし、毎日笑顔で過ごしていただけたらと願っています。

そして、日本でもヴィーガンがどういうものなのかが一般常識として知られ、ヴィーガンの人もそうでない人も一つの食卓を囲み、誰も疎外感を味わうことなく笑って美味しくご飯の時間を共にできる日が来るように、今の私にできることを一つ一つ取り組んでいきたいです。

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